クビシメロマンチスト

 ところどころ、小ネタで笑いました。ただ、キャラクターの表現や主義主張、文体、レトリックなどは読み易く、また小気味よいのですが、かといって大きく興味を惹くものではありませんでした。物語にページをめくりたくなる展開は無く、既視感ばかりで新しい発見も少なく、読後に狭義のカタルシスが感じられませんでした。大きな満足が得られる類の作品では無かったです。

 しかし、暇つぶしには最適。西尾維新の巧さが光る一品と言えましょう。ギャグはくどく無いので、分からなければすぐに流せますし、キャラクターは突飛でも、しつこい文章で思想を押し付けたりすることもありません。レトリックは分かる人だけが楽しめばいい感じ。読み手が好きなものをチョイスできる一方で、どの側面から見てもシンプルにまとまっているわけです。とくにラノベ読みであれば、軽い娯楽として幅広い層に受け入れられるのではないでしょうか。実際、売れていますしね。凄くないところが凄い。それが西尾クオリティ。