困ったちゃん?

 >N◎VAでRLをやった時の話。「やむにやまれぬ事情から道を踏み外したかつての相棒(オヤヂキャラ)と再開し、戦う」という渋いベテラン警官を想定した[PC1:イヌ]のポジションに、・本業は高校生の17歳、副業で警官 ・幼い頃に暗殺者の訓練を受けた最強の剣士 ・同僚のレイ(公式のキャラ)とは恋愛関係、彼女にだけ心を開く ・ちなみに千早神牙ではない。という厨設定の見本のようなキャストで入ってきたプレイヤーさん。

 卓につくやいなや、「俺、主人公属性だからPC1しかできないんです〜w」などと言って真っ先にイヌ枠を勝ち取った。やる気があるのは良いPLの条件のひとつではあるので、それを受け入れた。だが、キャスト作成時、俺は初心者さんへのルールレクチャーに労力を注いでいたので、PC1君のキャスト(彼はルールに慣れているようだったので)には目を離していた。そのため、キャストも出揃いさあ紹介という段で、初めて俺は上記の設定を見ることになったわけだが……さすがにもにょった。

 提示したハンドアウトは「かつての相棒と渋く戦ってくれ」という雰囲気をバリバリに押し出したもの。時間もそうあるわけでもなく、渋目のキャラを想定していたから10代はちょっと・・・とは言えず。まあ、ベテラン警官を想定してはいたが、若い警官でも元相棒ゲストとの関係を「イヌのイロハを教えた大先輩」的なものに変更すれば乗り切れそうだったので、そのように伝える。元々演出レベルで困る(用意した演出プランをいじらなきゃいけない)だけだし、シナリオ進行自体には全く影響もないのだ。

 で、実際にアクトが始まってみれば・・・PC1君は相手のゲストにほとんど関心を払わない。

 序盤。

 俺「そして、そこでキミは有り得ない人物を見た。かつての先輩ゲストの姿だ!」

 彼「フーン・・・怪しいな。こいつが犯人か? 『大人しく投降しろ!』と言って刀を喉元につきつけます」

 俺「ええッ?」

 彼「『早くしろ、俺はレイみたいに甘くはないぜ』」

 俺「え、えーと(この時点では敵対する動機はまずない)」

 中盤。

 俺「先輩は言う。『こうするしかなかったんだ。お前にも解る日が来る・・・』」

 彼「フン、解ってたまるか。だから貴様は弱いんだ。つまらん奴め・・・死ね!」

 俺「(か、葛藤ナシですか? つーか全否定ですか?)」

 クライマックス。

 俺「先輩は血まみれになりながらも立ち上がります。『立派になったな、PC1。だが、俺もまだ倒れるわけには・・・』」

 彼「《死の舞踏》を使用します。『奥義・×××!(名前失念)』その言葉を言い終わることなく、そいつの首が落ちます。『フン、くだらん』と言って、興味ないから去ります」

 俺「(う、浮かばれねー!)」

 セッション自体は、他のプレイヤーさんはRLとのキャッチボールが上手く行きとても盛り上がったんだが。その中でPC1だけが、RLの用意したフックを悉く無視して自分の世界に行っちゃったため、どうにもぎこちない展開に。

 「俺PC1なのに目立ちませんね・・・」と彼も少し不満そう。いや、キミが勝手にやってることだし。仕方ないので途中で路線変更。”親しい相手と戦う葛藤”のテーマを捨てて、PC1の凄さをバンバン持ち上げる方向にシフトすることで、一応はそれなりの盛り上がりを見せて終了。恋人設定の公式キャラ(レイ)で引っ張ると食いつきも良く、割と扱いは楽だった。

 終了後に感想戦で彼が言った台詞は、「PC1なのに恋愛ネタじゃなくて、ちょっと最初困りました〜w」・・・・いやまー、そういうことでもないと思うんだが。色々と台無し感を覚えたセッションでした。

 「プレイヤー(またはキャラクター)に葛藤してもらいたい」あるいは「キャラクターが葛藤することでシナリオが機能する」のであれば、RLはハンドアウトを示しつつ、口頭で、明確に意図を伝えればよいでしょう。その上で、プレイヤーとストーリー進行について認識のすり合わせを行うと、スムーズに事が進むと思います。
 RLが用意した設定・場面で「葛藤してもらいたい」と思っていても、それを言葉にして伝えない限り、「葛藤する・しない」の選択はプレイヤーに委ねられているわけで、エスパーでもないかぎり、互いに「こうあって欲しい」と願う展開にはなり得ません。互いが「望んだプレイ」のすれ違い、ですね。
 「PC1の凄さをバンバン持ち上げる方向にシフト」して、路線変更しつつも、楽しい卓になるように最後まで努めたRLは、それなりに技量のある方なのでしょう。それでも、こういった事故は発生します。コンベでは日常茶飯事。

 プレアクトって、大切ですね。