先輩とぼく

 脳を入れ替えられて「先輩がぼくで、ぼくが先輩で」という定番の入れかわりもの。ギャグはあまり好みではありません。しかし、定番のネタや、お約束を詰めこみつつも、それらの要素を軽妙に料理し、商業レベルでまとめてしまう作者の腕は、ラノベ作家として非常に優れた技術を有していると言えるのではないでしょうか。何度も読み返したくなる作品を書くタイプの作家ではなく、そこそこ売れるものを量産できる、まさにラノベ向きの人、との印象をうけました。

 ただ文体と芸風は、受賞時に「マジですか?」との問いに担当者から「私も吃驚しました」と言われてしまったのも納得できる内容で(もちろん巧いけれど賞向きとは言えない)、デビューは非常に危うかったのではないでしょうか。けれども、デビューさえしてしまえば、彼を求める層が今後買い支えていくと思います。先輩とぼくを書き続けているようですが、次の作品に期待しています。