空気を読め

 >ちょっとでも予定調和からはずれると「空気読め」と言われて非難される現今のRPGシーンは実に全体主義的だ。

 >言葉がしゃべれるなら妥協点を話し合え。

 >自分では"ちょっと"のつもりでも〜〜♪ 他の人にとっちゃ"ちょっと"じゃなかったりなあ〜〜♪

 「空気を読め」という台詞は、空気を読めない人に対する、解決策の提示にはなりません。「空気を読む」技能を修得しているにも関わらず、読むことを怠っている人に喚起を促がす意味で用いられるケースが多いのでしょうけれど、その場合でも、確実に「空気」を伝えられる保障はありません。相手は場の状態や傾向を把握できていないのですから、口頭で「空気」を伝えた方が、より確実に共通認識を形成できます。

 もとより「場の空気」についての説明義務は無く、能力や技能の無い者は卓から排除するつもりであったなら、そのことを伝えれば良いでしょう。そうではなく、皆でゲームを楽しもうという意志があるのなら、何の説明もなしに「空気を読め」は、ちょっと突き放しすぎじゃないかなぁ、と思ってしまいます。また、安易に「空気を読め」と発言してしまうと、大勢の側にいる者の怠慢と受け取られかねないので、危険な言葉だなぁ、とも常々感じております。

 私もよく「空気を読め」と言いたくなることはあります。けれど、そうした時は、どこかに傲慢な思いが潜んでいるのでしょう。「空気を読め」は、多くの人にとって、言われて気持ちの良い言葉ではないでしょうし、TRPGを楽しもうと考えているのなら、その空気を読めていない人に、楽しみの輪に加われるように手を差し伸べてあげて欲しいです。私は、誰かを嫌な気分にさせてしまったら、ゲームが楽しくならないですよ。むしろ悲しくなります。一般的には、そうでもないんですかねぇ。

 一方で、予定調和ばかりでは味気ないと思う人もいるでしょう。「空気」を読めない人や、読んだうえで違う演出がしたい人は、まずプレイヤーとしての「提案」から始めることをお勧めします。

 最近流行りのPC枠やハンドアウトを意識するプレイですと「PC1にのみヒロインを獲得する権利がある」と、暗黙のうちに認められているケースが多々あります。しかし、たとえPC1のハンドアウトにヒロインが幼馴染だと書いてあったり、俗に言うフラグがたつようなイベントが予定されていたとしても「ヒロインはPC1のリソースです!」と宣言されていない限り、ヒロインにちょっかいを出すPC5がいるかも知れない。「空気を読め」という台詞の格好の標的になりそうではありますがw けして略奪愛を演出したいわけでは無く、ヒロインと関わる演出がしたい! と純粋に思う人がいても不思議ではありません。

 そこで演出や判定がカッコよく決まって、GMが「ヒロインはPC5になびく」事にしたならどうでしょう。仮定として「ヒロインはPC5になびく」ことが認められるような「空気」が形成された場合です。

 私は予定調和な演出より、そういったプレイヤーが望んだ演出の方が好きですから、拍手喝采するかも知れません。しかし、事前の「提案」無しに、いきなりヒロインを横取りされると、周囲は盛り上がっていても、PC1が面白くない思いをしているかも知れませんよね。ごく一部の少数派が、その「空気」を吸い辛いと感じているかも知れないわけです。さて、この場合はどうするべきなのか。

 既に形成された「空気」に合わせることが一番かも知れませんけれど、私は、常に主導的に「空気」を形成している側に合わせることが最適とは限らず、歩みよりは「空気」を読めていない側や、「空気」を吸い辛いと感じている少数派へ向かっていくことで、まるくおさまる場合もあると思うのです。

 そしてこうした問題の根本的な予防策として、やはり事前の「提案」をすべきでしょう。私はスレにあったように常に「言葉がしゃべれるなら妥協点を話し合え」と自分に言い聞かせております。自分が大勢の側にいたとしても「空気を読め」ではなく「言葉を使って話し合いましょう」と、私は言いたい。

 感動のシーンでは心温まる台詞を。宿敵との対決シーンは因縁のあるPCの出番。こういった お約束が語り継がれるのは、一般的に気持ちが良いとされるツボを押さえた演出だからです。しかし、もっと素晴らしく、皆で楽しめそうなアイディアが浮かんだなら、そこで「提案」しない手は無いですよ。採用されるかどうかは別ですが、遠慮をする必要は無いでしょう。少なくとも、なんの「提案」もせずプレイ後に「予定調和だ」と悪態をつくよりは遥かに前向きです。

 そして、お地蔵さんの私が言うのも何ですけれど、ベテラン・プレイヤーの皆さんには、もっと優しく初心者と語り合う余裕を持っていただきたい。前述の「提案」を引き出したり、それについて真面目に検討する真摯な姿勢で、共にゲームを楽しむ仲間と正面から向き合ってほしい。初心者に対する罵りや、突き放した発言を聞くたびに、そう願って止みません。